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体位を自由に選択できるよう支援することは、出産への積極性・主体性を高める援助につながることが示唆された」と同様の結果が得られたと考える。
次に、施設別にみると、「畳や絨毯などの上でゴロゴロ横になったり好きな体位をとりたい」「体位や姿勢を拘束されたくない」「呼吸法を取り入れたい」が病院や診療所より助産所に有意に多かったのは、助産所がこのような過ごし方が可能であろうと考えたためと推測される。また、「特に希望はない」も助産所に有意に多かったが、それは助産所での過ごし方は自由で、特に制限されないことを予め知っていて、それ以上は特に希望しない意味かとも考えられる。さらに、「呼吸法を取り入れたい」が病院や診療所より有意に多かったことから、よりアクテイブな出産につながる考えも合わせ持っていることが推察できた。
次いで、「歩き回りたい」希望が、病院に比べて、診療所で有意に多かったのは、病院よりも小規模な診療所が対象の希望を取り入れたり、規則も緩やかで比較的自由に歩き回れると考えたためであろうと推測される。
学歴別では、希望の最も多い「体位や姿勢を拘束されたくない」が短・大卒に有意(p<0.01)に多かったことは、何らかの形で分娩に対する学習を行った結果によるものと思われる。
初・経産別では回答の多い項目では差がみられなかった。このことは過去の分娩経験によって過ごし方を変化させたいという希望は少ないといえよう。これはまた、自由に過ごす項目を多く設定したためでもあろう。
以上から、出産直前までの過ごし方については、仮説が支持された。

 

6. 仮説6:(分娩への参加ニーズは高く、参加者に夫が多いであろう)
出産時には誰かそばにいてほしいと回答する人が多く、そばにいてほしい人では有意(P<0.01)に夫が多かった。佐藤香代ら15)は、「出産時、家族に傍らにいてほしいと希望した者は68.5%で、中でも夫が最も多く83.6%であった」と報告しているが、今回の調査でも同様の結果であった。
また、そばにいてほしい理由は、「気持ちが落ち着く」、次いで「赤ちゃんの誕生を一緒に体験できる」であった。内藤16)によれば、夫の分娩立ち合いの主な動機は「分娩経験の共有」「誕生の瞬間の共有」であり、妻の理由は、「安心]、「誕生の瞬間の共有」であった。「気持ちが落ち着く」は「安心」に通じると考えられ、共通の結果が得られたといえよう。また、志水ら17)は、満足な分娩は全期間を通し、産婦のニーズにあった周囲の人間のサポートによる精神的安定と主体的行動とそれに対する自信である述べている。
出産時には、誰かそばにいてほしい、特に夫にそばにいてほしいというニーズが高く、このような産婦のニーズを満たすことによって、産婦が満足する分娩に導く援助ができると考える。
仮説の、分娩への参加のニーズは高く、妊婦が希望する参加者に夫が多いことが支持された。

 

7. 仮説7:(医療関係者に対するニーズはあるが、現実はおまかせであろう)
全体では、医療関係者に対する希望があるかでは、ややそう思う傾向(平均値は全ての項目で3.20−4.60の間)があり、施設別・学歴別・および初・経産別にみても同様に医療関係者に対してニーズがある事がわかった。施設別では病院・診療所に比べて助産所で有意(p<0.01)に「特に希望はない」が高かったが、これは助産所が十分な時間をかけて妊婦に説明をするため、それ以上の説明を希望する必要がなかったと考える。また「言った事や、した事について批判せずに受け止めてほしい」と「出産時、呼吸法を一緒にしてほしい」、では、希望が通りやすいことを妊婦があらかじめ知った上で施設を選択したであろう

 

 

 

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